17歳の不良と6歳の殺し屋
翠はいつの間にか両目のコンタクトを外していて冷めた表情を私に向けていた。


「それと、翠も本名じゃない。名は翡翠(ヒスイ)だ」


翠…翡翠の言葉に妙に納得してしまう。髪も目もとても美しい宝石のような翠色をしていたからだ。
その姿は本当に人形のように愛らしく、その細められた無表情は神々しくもあった。
だが、それが何だというのだ。生憎、私はそんな事で心動かされたりしない。


「で、翡翠。私に何の用?」


単刀直入にモノを言う私に翡翠は笑った。

「随分と肝が据わってるのね。あの女とは大違い」

彼女の言葉は私の心を一々刺激した。彼女の方も私がイラついていたのに気付いたらしくクスリと笑って話を続けた。


「この際ハッキリ言うわ。その方がお前にとっても好都合だろうしね」

私は黙って翡翠の小さな桜色の唇が動くのを見ているしかなかった。


「関ケ原 雫」


翡翠は立ち上がったまま私を見下し、いつの間にか手に持つ何かを私に向けて言葉を吐
いた。


「貴方を殺しに来ました」


シン…ッと静まり返る室内。ゴクリと唾を飲む音とガチャリと鉄が唸る音。
彼女の可愛らしい小さな手には黒々とした拳銃が握られている。

「……は?」

私は、やっとの事でその一言だけ出た。流石に動揺を隠せない。
確かにこの女の子は普通じゃない。しかしだからと言ってこの展開は余りにも急だ。
私はなんとこ心を落ち着かせた。

「…アンタ、何者?」

私の問いに翡翠は平然と答えた。



「私?私は、殺し屋よ」


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