17歳の不良と6歳の殺し屋
しばらくして、やっと翡翠の服がチラリと見えて来た。
私は、手に持つ小さなボールをヒュッと翡翠に向って投げた。
パシュッ!と私の手から数メートルも離れない内に打ち落とされてしまった。
今度は二個連続で投げる。それも同じように打ち落とされた。
私は残りのボールを全てケースから取り出して翡翠に向って投げつけた。
翡翠はそれら全て打ち落とす。
そして、遠くの方からガチャッという音が聞こえた。


(よし!!)


私は壁の影から飛び出す。


そう、私はこの瞬間、「弾の入れ替え」を待っていたのだ。


銃の腕に自身のある奴は大抵、物が飛んで来ると銃で撃ち落す。それに銃の腕を磨くのにだってこういった修行をするだろう。
何より六歳児。身柄で防ぐのは難があるはずだ。


だが、私はそれでも平和な世界で生きてきた人間…少々考えが甘かった。
私のこめかみ辺りに、銃口が向けられる。
パシュンッ!と鳴り響く銃声。瞳が見開かれる。その瞳の色は翠。


「!?」


翡翠は余程驚いてヒュッと勢い良く後ろに飛び退いた。
私は打たれる前に下にしゃがみ込んでいたのだ。翡翠には私が急に消えたように見えただろう。


伊達に、幼い時から武道をしていたわけではない。フットワークには自信があった。
翡翠が驚いているのを良い事に私は懐に飛び込む。
相手の懐に入るのは私の一番得意とする戦法方だ。

「くッ…!」

翡翠の顔が歪む。これだけ近づいてしまえば、こっちのもの。私は銃を構える隙を与えない。

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