17歳の不良と6歳の殺し屋
母の隣でちょこんと座っている可愛らしい少女。
母はその言葉にさらに声を弾ませた。
「この子はね!翠(みどり)ちゃんよ!六歳!」
「…聞いているのは名前じゃないよ。年齢でもないよ。」
少しどすの効いた声も、毎日私と共にいる母に効力があるはずもなく、うきうきとまた話を進める。
「今日ね、街に出てみたらある人に出会ったのよ。それでホラ!」
母は、茶色いくたびれた大き目のバックを逆さまにした。その開け放たれたバックからドサドサと何かが落ちて来る。
「…金?」
「そう!お金よ!!」
紙の束…それは紛れもなく札束だった。あまりの量に身震いをしてしまう。
「なんだよ…それ…」
表情は変らなくても内心は焦っていた。母はただ笑っている。
「この子をしばらく預かって欲しいって。こんなに!!」
「……」
「必要なら小切手も渡すって…!!素晴らしいでしょう!?」
母は立ち上がって小躍りした。そんな母を翠と名乗る少女は微笑んで見ていた。
小さな身柄に肩甲骨くらいまで伸びる髪。まるで天使のような愛らしい顔。
だが、何かゾッとするような威圧感を感じた。
「どう考えても話が上手すぎるよ。大体、何でその子を預かる必要があるの?これだけ金を持っていて…」
少女はその日本人離れした顔を私に向けると、小鳥のような声で話しだした。
「ごめんなさい。私の両親はとても忙しいのです。私は気に入った人にしか世話をしてもらいたくないので…」
なんだ、その言い分は。
まるで話しにならない。私は淡々と言葉を繋げた。
「母を気に入ったと?」
「お姉ちゃんも好きよ?」
決定的だ。この子は危険物。
私の本能がそう告げている。というより、誰であろうとその事はわかるだろう。
私の愚かな母親以外は。
少女は間違いなく何か目的があってこの家にいる。この頭の弱い母を上手く騙している。
ただ問題は…
(目的が…読めない…)
私は少女を見る。少女はお人形の様に笑う。これだけ派手に金を使っているんだ。金は目的から除外される。
では何か。
今時、金以外の目的はさっぱりと思いつかない。
笑う少女の隣に宝石の様に輝く目をした母。
私は一つ溜息を吐くと、目を静かに伏せて、「わかった」と応えた。
母はその言葉にさらに声を弾ませた。
「この子はね!翠(みどり)ちゃんよ!六歳!」
「…聞いているのは名前じゃないよ。年齢でもないよ。」
少しどすの効いた声も、毎日私と共にいる母に効力があるはずもなく、うきうきとまた話を進める。
「今日ね、街に出てみたらある人に出会ったのよ。それでホラ!」
母は、茶色いくたびれた大き目のバックを逆さまにした。その開け放たれたバックからドサドサと何かが落ちて来る。
「…金?」
「そう!お金よ!!」
紙の束…それは紛れもなく札束だった。あまりの量に身震いをしてしまう。
「なんだよ…それ…」
表情は変らなくても内心は焦っていた。母はただ笑っている。
「この子をしばらく預かって欲しいって。こんなに!!」
「……」
「必要なら小切手も渡すって…!!素晴らしいでしょう!?」
母は立ち上がって小躍りした。そんな母を翠と名乗る少女は微笑んで見ていた。
小さな身柄に肩甲骨くらいまで伸びる髪。まるで天使のような愛らしい顔。
だが、何かゾッとするような威圧感を感じた。
「どう考えても話が上手すぎるよ。大体、何でその子を預かる必要があるの?これだけ金を持っていて…」
少女はその日本人離れした顔を私に向けると、小鳥のような声で話しだした。
「ごめんなさい。私の両親はとても忙しいのです。私は気に入った人にしか世話をしてもらいたくないので…」
なんだ、その言い分は。
まるで話しにならない。私は淡々と言葉を繋げた。
「母を気に入ったと?」
「お姉ちゃんも好きよ?」
決定的だ。この子は危険物。
私の本能がそう告げている。というより、誰であろうとその事はわかるだろう。
私の愚かな母親以外は。
少女は間違いなく何か目的があってこの家にいる。この頭の弱い母を上手く騙している。
ただ問題は…
(目的が…読めない…)
私は少女を見る。少女はお人形の様に笑う。これだけ派手に金を使っているんだ。金は目的から除外される。
では何か。
今時、金以外の目的はさっぱりと思いつかない。
笑う少女の隣に宝石の様に輝く目をした母。
私は一つ溜息を吐くと、目を静かに伏せて、「わかった」と応えた。