ココとマシロ


一瞬にしてパニックになった頭が、スッと妙に落ち着いたのがわかった。


…逃げなきゃ、これは危ない!


そして頭の中では警鐘が鳴り響く。その瞬間、ココの足は動いていた。ゆっくりと一歩、また一歩と離れ始めた後に、それはやがてだんだんと速くなり、気づけばココは走り出した。

この感覚は、以前体験した感覚。


追われる恐怖。


走って来る音はしない。でも振り返ればそこに居る。それは毎回変わらない距離間で、暗闇の中ぼんやりと目に映るのは完全に人の姿をした影。


ココはそれを知っていた。いつもそうだった。以前も同じだった。でも…ただ一つ、当時と違うのはもう知ってしまっていること。


捕まった後どうなるのか。ココの頭の中にはその様子が浮かんでしまっている。浮かんでしまっているのだ。


しかもーーその後の自分を助けてくれる存在。


ーーマシロはもう、ここには居ない。




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