ココとマシロ


「マシロってなんなの?影ってなんなの?なんであたしには影が見えないの?なんで?あんたには見えてるのに」

「……」


「あたしは、何も気づいてあげられない」そう言った笑華の頭に浮かぶのは、ココが倒れたあの日。初めてマシロを見たあの日。直哉もそうだと知ったあの日。

あの日は、笑華にとって忘れたくても忘れられない日になった。
今まで自分が信じていたものが覆されたのだ。何が起こるかわからない。正直、少し恐怖を覚えた。怖いと思ったのだ、あの日のあの時。

もしかしたら、今日もーー…


「......まぁ、そうと決まったわけじゃないし、違ったらただの笑い話なんだけどね」


そして再び歩き出す笑華。その後ろを黙って直哉は続いた。何を言えばいいのか、言ってあげるべきなのか、直哉には分からなかった。


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