ココとマシロ
「……おい、マシロ。オレはあの時何が起こったのかは知らない。しゃがみ込んだココを見て、あの尋常じゃねぇ雰囲気に呑まれた」
あの時とは、あの山中での出来事があった日、マシロが影を吸収したあの夜の事を言っているのだと、マシロはすぐに理解した。
「正直、軽くパニクってた。ココの様子にどうすればいいのかさっぱり分かんねぇし、身体もうまく動かねぇし、何が何だか分かんなくなって…あの時、おまえが居なかったらきっとどうしようもなかった。ココが言ってるのは間違いじゃない。でも……オレは、思ったんだ」
直哉は真っ直ぐにマシロへと視線を向けた。その瞳に揺らぎはない。
「次はオレが守る。オレがココを守る。ココを連れて横切ったおまえと目があった時ーー決めたんだ」
「だから、後はオレに任せておまえとココの思うようにやればいい」そう言った直哉の瞳は、マシロの心にくっきりと残った。
真っ直ぐで力強いその瞳ーー
ココが気を許した意味が、マシロにも少しわかる気がした。