ココとマシロ


その声に反射的に足を止める美波。そこですかさずココは美波へと駆け寄った。


「……ごめんね、ミナミちゃん」


そう呟いたココは美波の肩にそっと手を触れた。そして一瞬、マシロを思い浮かべる。…マシロ、ごめんなさい。許して。

心の中で呟いて、肩に触れる手に意識を集中させた。


影を吸い寄せるイメージ。ココの後ろへと覆い被さるイメージを作りあげる。

そして、徐々に重くなる身体。


始めは戸惑い、「ごめんって何よ!」と、大声をあげた美波だったが、ピタリと動きを止めた様子から、すぐに自分の変化に気がついたようだった。

影が無くなると、まるで心にかかった靄が消えたようにスッキリとした気分になる。これを今、彼女は体験しているのだ。

ココが、彼女の影を引き受ける事によって。

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