ココとマシロ


「ダメだ、簡単に名前を教えるなよ」


直哉は笑華に向かって言った。しかし視線はキツくマシロへと向けられている。


「…え?なんで?つーかそれって…、」

「いーからソイツから離れろ!」


直哉は再度、切羽詰まった様子で大声をあげる。

しかし笑華にはそれが分からなかった。直哉の態度も、直哉の言葉も、それが表す今の状況の意味も。


そしてその意味にいち早く気が付いたのは、敵意を向けられたマシロの方だった。


「…別に捕って食うような事しないって」


心なしか面白そうにマシロは言う。そして意味有り気に、直哉へ挑発的に笑ってみせた。


「君、ソッチの人間か」


……その言葉に、直哉は何も反応を返さなかった。



< 79 / 258 >

この作品をシェア

pagetop