ココとマシロ
「ダメだ、簡単に名前を教えるなよ」
直哉は笑華に向かって言った。しかし視線はキツくマシロへと向けられている。
「…え?なんで?つーかそれって…、」
「いーからソイツから離れろ!」
直哉は再度、切羽詰まった様子で大声をあげる。
しかし笑華にはそれが分からなかった。直哉の態度も、直哉の言葉も、それが表す今の状況の意味も。
そしてその意味にいち早く気が付いたのは、敵意を向けられたマシロの方だった。
「…別に捕って食うような事しないって」
心なしか面白そうにマシロは言う。そして意味有り気に、直哉へ挑発的に笑ってみせた。
「君、ソッチの人間か」
……その言葉に、直哉は何も反応を返さなかった。