ココとマシロ
直哉の視線に気が付いたココは小さく首を傾げ、尋ねてみた。けれど直哉はすぐにココの方へと向き直り、「いや?別に〜」と、何事も無かったかのようにもう一度笑顔を作り直してみせる。
そして「早く行こうぜ!」と先に歩き出す直哉にココもついて行こうとしたが――ふと気になり、ココも直哉が見ていた方へと振り返った。するとそこは――
……マシロが…居た場所?
直哉が見詰めていた場所。そこは先程まで自分が居た場所――そんな、気がする。しかしそこにはすでにマシロの姿は無い。でももしかしたらその時はまだ居たのかも。だとしたらマキ君は、マシロが居たのがわかったの?うーん、でも他にも沢山人も居るし……
しかしココはそこで、あ、そっかと思い出した。
そうだよ、マシロは見えないんだった。マキ君が見てるはず無いや。
そして先を行く直哉の「おーい、はやくー」の声に元気に返事をして、ココは走り出した。
今日は少しずつ、知らない所でズレた朝を迎えたのだった。