ココカラハジマル
あの人だった。
今朝会った、去年のクリスマスぶりの
彼だった。
「どうも、」
『うん。』
爽やかににそう言った。
「部活とかしてないんですか?」
『うーん、してないよ。莉玖ちゃんも?』
「まあ・・・」
夕日が落ちかけていてかすかな光が
がんばり続ける。
誰も残らない、部活生の声だけが遠くで響く
そんな教室の目の前で
また私は、名前も知らない彼と出会った。
廊下には、私たちの声だけ。
『また会ったね、
2-SAの逢沢 要【アイザワ カナメ】よろしく。』
「逢沢くん…よろしく。」
『要でいいよ。はい、呼んで?」
彼の顔が近くまで覗いてくる。
どうしてドキドキさせるのだろう
「・・・無理です。」
『えーケチ。』
「そういうことじゃないです。」
『どうして敬語?』
「一応会ったの数少ないし、年上って感じがして、」
『そうかな…?でも敬語なんか使われたら、
壁感じるよ』
「まだありますよ、壁。」
『冷たいな、莉玖ちゃん』
「私、下手くそなんです。人と関わるのが。」
その瞬間。
視界が暗闇になる。
逢沢 要の香りに包まれる。
なぜか彼に抱きしめられている。