*恋の味[上]*【完】
「真麻〜っ!ね、友達って?」
前々から電話して、話をしてたから、由良を連れてくることを知ってる。
私が初めて連れてくる友達だから、楽しみなんだろう。
「し、失礼します」
少し怯えながら、遠慮がちに入る由良。
お母さんの方をみてみると、パァァッと顔つきが明るくなっていくのが分かる。
「かっ、可愛い〜!」
ほらね、と言わんばかりに抱きつく母。
この人が、私のお母さんだと思うと恥ずかしくて仕方ない。
「……う゛…」
由良苦しそうだし。
「離してあげなよ」
「あと15秒!」
意味分かんねぇー。
何秒抱きついても変わらないって!
由良が固まってるのが分からないの?
あ、分かるわけないか。
1人コントを心の中でしてる間に15秒たったらしく離れたお母さん。
まじまじと由良の顔を見つめる。
ビクビクしてる由良。
「も〜!か・わ・い・い!」
だからなんだよ?って感じ。
「…は……ははは…」
由良さん!目が笑ってません!
「お母さん!一旦座りなよ!」
一旦じゃなくて、永久に座っててほしい。
「あっ申し遅れました。真麻の母です」
ニッコリ笑って言う母。
今さらだよ!
てか、もう言ってるよ!
「まっ…松川由良…です」
苦笑いしながら言わなくていいんだよ?
いや、もう名乗らなくていいんだよ?こんなオバサンに。
なんて言ったら、ボコられちゃいます、私。
「さっ!時間ないでしょ?さっさと気付けしちゃうわよ!」
腕まくりをして言う、お母さん。
やる気満々だな、こりゃ。
「よっ…よろしくお願いします!」
よろしくはいらないでしょ?
「はいは〜い」
もう、疲れた。本気で。