*恋の味[上]*【完】


「うわー、凄い人!」

「こっからは別行動にしよっか」

千年くんの提案で、別行動することにした。

6時30分くらいなのに、もう満員って感じ。

7時30分からの、花火に“最後のハート型の花火が上がったとき、キスをすれば永遠の愛となる”ってゆー、ジンクスがあるもんね。

ハート型ってことで、他の地域の夏祭りより人気。

みんな乙女だなって感心するよ。

「離れんなよ?」

雷斗が私の手を掴んだ。

さっきまで寝坊助だったのに。

そう思うと、笑いがこぼれた。

「離れないよ」

笑っていうと、

「信用ならねぇなぁ」

いやいや、こっちの方がならないよ。

寝坊助が何をいうんだか。

「しなくて結構でーす!あーあ、私って可哀そう」

ちょっと、意地悪な演技をしてみる。

雷斗はと言うと……

無視ですか。

見た感じからすると、雷斗も初めてっぽい。

ふふっ、可愛い。

なんていったら、不機嫌になるから、心の中にとどめておこう。

「なぁ、リンゴ飴ってうまいのか?行列できてんじゃねぇか」

リンゴ飴って、夏祭りの定番物でしょ?

「んー、おいしいと思うよ!買いにいく?」

「あぁ」

雷斗が興味を持つなんて、珍しいこともあるんだな。

案の定、すごい行列ができてた。

私たちは並ぶことにした。


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