*恋の味[上]*【完】
2学期
早くも2学期、遅くも2学期。
1年の中で1番長い時期がやってきた。
もう9月だというのに、まだ暑い。
新しく買った、パリパリのブラウスに袖を通す。
長かった夏休み。短かった夏休み。それを思うのは人それぞれだろう。
家を出て、約1ヶ月ぶりの道を歩く。そして、ばかでかい学校に向かう。
悪夢のような日がこないことを願う。
ため息をつきつつも、重い足を順調に運んでいた。
「ふぇーん」
あれ?誰か泣いてない?
クイッ
うをっ?!
ひっぱられた方をむくと、幼稚園児が立っていた。
「どうしたの?」
号泣してたのがおさまった。
「ぇ……マ…マが…いな…くなっ…たぁ」
えーっと、つまり迷子ね。
どうしよう。私も学校あるし…。
「ママー!」
びぇーんと泣くこの子。
名札を見ると“ひまわり幼稚園”と書いてあり、“眞鍋しほ”と書いてあった。
しほちゃんか。
「しほちゃん!お姉ちゃんと一緒に幼稚園いこっか?」
ママを探してても、キリがない。
学校よりも先に、しほちゃんを助けよう。