*恋の味[上]*【完】
「おい」
倉橋くんの声がする。
おい?誰に向かって言ってるのかな?
「おい、無視すんじゃねぇよ」
私?と思い、チラッと倉橋くんの方を見ると、目がバッチリあった。
「それって私のこと?」
「お前しかいねぇだろ」
相変わらずムカつくなぁ。
「私にはちゃんと名前あるんですけど?」
「あっそ」
あらそうですよ。
自分から呼んどいて意味分かんない。
「で、何?」
「お前さ、アイツと付き合ってんの?」
そう言って顎で雷斗を指す。
その時、雷斗と目が合ったら眉間のしわがすごい。
うっわー。束縛激しい男。
「ま、そうだけど?」
嘘つくほどのモンじゃないし。
「へぇー」
……――あの時、違うって言ってればよかったのかな。