*恋の味[上]*【完】
「そろそろ戻るか?」
今度は柔らかい表情で、私の手を握った。
「うん」
私も笑顔で頷いた。
周りを見ると、さっきよりも人が少なかった。
ってことはチャイムギリギリ?
急いで戻ると、由良と千年くんがいた。
「あれ?その顔はすっかりいい感じで話終わったんだ?」
またニヤニヤしながら言う由良。
「まぁな」
「雷斗も素直じゃないねー?」
「うるせぇよ」
千年くんって二重人格にあたるのかな?
それとも素?
「ねぇ、なんでこんなに人がいないの?」
教室には、私たち4人だけ。
「移動教室」
移動教室?チャイムが鳴るのは、もう1分もない。
「授業は?」
「美術」
ぎ、美術ぅぅぅー?!
美術の担当って、あの恐ろしい島ちゃんじゃん!
「急ごっ!」
時間がない私たちは、道具を持って急いで美術室に向かった。