*恋の味[上]*【完】


「そろそろ戻るか?」

今度は柔らかい表情で、私の手を握った。

「うん」

私も笑顔で頷いた。

周りを見ると、さっきよりも人が少なかった。

ってことはチャイムギリギリ?

急いで戻ると、由良と千年くんがいた。

「あれ?その顔はすっかりいい感じで話終わったんだ?」

またニヤニヤしながら言う由良。

「まぁな」

「雷斗も素直じゃないねー?」

「うるせぇよ」

千年くんって二重人格にあたるのかな?

それとも素?

「ねぇ、なんでこんなに人がいないの?」

教室には、私たち4人だけ。

「移動教室」

移動教室?チャイムが鳴るのは、もう1分もない。

「授業は?」

「美術」

ぎ、美術ぅぅぅー?!

美術の担当って、あの恐ろしい島ちゃんじゃん!

「急ごっ!」

時間がない私たちは、道具を持って急いで美術室に向かった。


< 154 / 260 >

この作品をシェア

pagetop