*恋の味[上]*【完】
無意識に病院に来てた。
初めて学校を抜け出した。
病院に入ると走ったらいけないのに、走って走って走って……。
看護師さんに見られたくなかった。
見つかりたくなかった。
だから苦しくても走った。
お母さんなら知っているかもしれない。
お母さんなら見方してくれる。
そんな期待を脳が持っていたんだと思う。
“コンコン”
「はぁい」
呑気な声が聞こえる。
ノックをするまでは震えてなかった足が震える。すくむ。
でも、私は来たんだ。
取っ手を掴み、扉を開けた。
「ま、あさ?」
驚きを隠さないお母さん。
その理由は2つあると思う。
1つ目、学校の時間だから。
制服きてるし、時間も時間だもの。
そして、2つ目。
……頬には涙がとめどなく流れているから。