*恋の味[上]*【完】


お母さんの口がゆっくりと開く。

「……壊したのは、きっと私よ」

…頭が真っ白になった。

その現実を受けとめたくなかった。

「ど、ういうこと…?」

顔を引きつらせて言う私に、罰悪そうな顔をするお母さん。

「真麻、暁グループの暁雷斗くんと交際してるでしょ?」

「………?!」

なんでそのことを?

雷斗と付き合ってるって言ったことはない。

ましてや、彼氏ができたってことも。

「真麻の初めて彼氏。できたときは喜んで応援するつもりだった。ある人から聞いて、一瞬頭がとんだ」

「………」

言ってた。お母さん、「彼氏まだ作らないのー?できたら応援するからね!」って。

違ったの?

言わなかった私がいけなかった?

でもいつかは言おうと思っていたよ?

すると、お母さんの口から今一番嫌な人の名前がでてきた。

「倉橋蒼空くん」

「………?!」

なんでお母さんが倉橋くんのこと?!

「お母さんが鶯譌に呼んだの」

意味が分からなかった。

理解さえしたくなかった。


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