*恋の味[上]*【完】
−雷斗Side−
真麻を追いかけようと慌てて足を出したが、腕からの力で止まった。
掴んだ奴は……倉橋。
「離せ」
威嚇するような低い声をだす。
今までで出したことがない声。
「お前が行っても無駄だ」
真麻があんなに取り乱してるのに、関係ないとでも言うように止めやがる。
「いい加減にしろよ。お前なんかに邪魔されたくねぇんだよ!」
「雷斗!」
怒鳴る俺を押さえる湧弥。
「雷斗くん……あ、初めましてよね」
ニッコリ笑う真麻の母親には裏なんかないようにみえる。
「初めまして…」
反対される理由が分からない。
「初対面なのに、こんな雰囲気でごめんなさいね」
「いえ…」
「私が反対する理由。聞こえてたのよね?気になるのよね?」
案外鋭いな……。
でも、正直すっげぇ気になる。
「はい」
嘘なんかついたら勿体ねぇ。
「……なら話すわ」
「いや、麻美さん。キツいんじゃないんすか?……特にあれは…」
話を止めようとしやがるコイツ。
「大丈夫よ」
真剣さと冷静さを保ちながら表情をつくる。
「反対する理由は……――」
けど、理由がキツすぎて苦しくなった。
俺と真麻の交際が続くのは、不可能だと言うように…。