*恋の味[上]*【完】
「お父さん!」
気がつけば大きな声を出して手を掴んでた。
振り向いた顔は、少し驚いていた。
やっぱり……。お父さんだ。
夢で見たときも格好良かったけど、実物で見たほうがもっと格好いい。
「…ま、あさ…か?」
真麻、確かに真麻って言った。
「お父さんだよね?!桜野空真だよね?!」
大きい声を上げるから周りの人からの視線が鋭く突き刺さった。
「いや、空真だが桜野ではない。北条(ホウジョウ)空真」
北条…?って、北条?!
「北条財閥?!あの、香水の?!」
「あぁ」
お父さんってリッチ系だったんだ。
初めて知ったな。
お母さんに聞こうと思えば聞けた。
ただ、聞く勇気がなかった。
弱かったからだよね。
「なんで俺がわかった?」
「夢」
そう言うと、「夢?」と一瞬顔をしかめたが、すぐに微笑んだ。