*恋の味[上]*【完】
「俺と麻美、真麻。一緒にいないことを不思議に思ったことはないか?まー、麻美は病にかかっているから、正式には俺と真麻だな」
不思議に思ったこと……。
それとは違うかな?
「不思議というより、ずっと見捨てられたと思っていたから」
お母さんに聞いたことは数回あった。
小学生の日曜参観日も、友達はお父さんがきていた。
私には、おばあちゃんがきていた。
その頃からお母さんは入院していたから。
「見捨てた……か。真麻からしたらそうなるかもしれないな」
お父さんが苦笑いする。
え、そうなるかも?
「違うの?」
だって、そうじゃない。
おばあちゃんっていっても、お母さんの方だけ。
お父さんの方のおばあちゃんは会ったことすらないか、覚えていない。
「俺たちは一緒にいたかったんだ。…3人で一緒に」
お父さんが怒りを抑えたような声をだす。
「関係を壊したのは……俺の母と父だった」
今の私たちと一緒だというの?
お父さんが倉橋くんになっているだけで……。
お父さんたちと同じことを私たちにするの?