*恋の味[上]*【完】
「真麻を生む前のことだった。俺と麻美が出会ったのは高校のとき。彗驪って分かるよな?」
彗驪って、彗高だよね?
「分かるよ」
お父さんもお母さんも頭がよかったんだ。
「お母さんは学年1位の特待生。俺は学年2位だった」
私と雷斗とまったく同じ。
「俺は北条の家として生まれたからには恥のないよう、1位をとれと言われてたんだ。麻美の家はどちらかというと貧しく、金の面で1位を狙ってた。それは後々知ったんだがな」
どこまで一緒なの……。
って、…雷斗もそういわれてたのかな?
「惹かれていったのは俺の方だな。…麻美は学校1美人で、男からの人気は半端なかった。最初は生意気な奴。そう思ってたんだけどな…。俺が図書室で勉強をして、夜遅くなったから近くのレストランに行ったんだよ。そしたら麻美がいてよー。ま、彗驪はアルバイト禁止っつー決まりがあって、俺、最低だったからそのことチクろうと思ったわけ」
………腹黒。
お母さん美人だもんなー。お父さんも。
「当然制服姿の俺に麻美は気づいて……あのときの顔は面白かったよ」
と、クククと笑うお父さん。
「続き」
せかす。ちょっと腹立ったから。
「あぁ。ま、それで「内緒にして」って言われて、最初は「誰がするか」とか思ってたけど、間近で顔みると可愛いくてさ。「おー」とか言っちゃったわけよ」
はい、カット。
ノロケはいったー。
ノロケなしで頼みたいよ。
「そしたらよ?スッゲー可愛い顔で微笑んでくるから、一瞬で好きになっちまったよ」
心の中で「あっそ」でも言っておこう。