*恋の味[上]*【完】
「でもな、その笑顔も崩したのは俺のせいなんだ」
急に顔つきが変わった。
「俺は麻美に告白したんだ。結果は成功。まー、俺もモテねぇわけじゃーなかったし?そりゃあ幸せだったよ。幸せすぎて……現実を考えてなかった」
現実かぁ…。
「複雑だったんだよ、周りが。……俺の幼なじみに紗千佳(サチカ)ってやつがいたんだ。藍川グループ(アイカワ)。知ってるよな?」
藍川グループって、ファッション門で有名なブランドを仕切ってるんだよね。
「知ってる…」
「紗千佳にな、俺は何度も告白されてた。もちろん、全部断ってた。ただ、親は賛成で何度も「付き合ってみてはどうだ?」なんて言われてたんだ」
……それって金しか求めてないことだよね?
「それも断ってたんだがな。ある日、俺と麻美が仲良さそうに歩いてるのを紗千佳が見かけたらしく、親父に言ったんだよ。「私をほったらかして新しい女と関係を持ってる」と。親父は紗千佳には優しかったから、俺じゃなく紗千佳の味方をしたんだ」
ひどい…。
実の息子より、他人が大切だなんて!
「俺は別れをおしてくる親父にキッパリ言ったんだ。「何を言われても別れない」ってね。現実そう甘くなかったんだ。親父は麻美のことをとことん調べて、身元まで調べた結果、俺は打たれたよ。「お前は馬鹿か!」って」
は?笑える。お前が馬鹿じゃん。
あー、本人の前じゃいえないけど?