*恋の味[上]*【完】
「いつも真麻がお世話になってます」
見た目からは似合わないセリフだけど、“お父さん”という人に言ってもらえるのは初めてで、なんだか嬉しかった。
「クッ……ククッ……」
急に笑い始める倉橋くん。
え?何コイツ笑ってんの?
ムカつくー!
「……も、…無理……!」
みんな哀れな目で冷ややかな視線を送る。
「おい」
ドスの効いた声は今まで聞いたことのない声。
「蒼空、ざけんじゃねーよ」
え?は?はあん?
「…す、スミマセン」
え?今の声、お父さん…だよね?
「……つか、その口調…いいんすか?」
「は?あっ……」
え、なになに?
焦りだすお父さんに飽きれ気味の倉橋くん。
隠し事?……気になる。
「……まぁな、これから話そうと思ってたことなんだ」
ごくり、と唾を飲み込む。
「空真さん、元族総長」
………………。
「「「「は?」」」」
「おい!」
由良たちもびっくりしてるし。
え、族?総長?
「まー、そういうことだ」
うむうむと頷く。
は?いやいや、どういうこと?
「族って……「暴走族」
ですよね……。
「どこの…「蘭王(ランオウ)」
はい?卵黄?
「言っとくけど、卵の卵黄じゃねぇぞ?」
倉橋くんは人の表情で分かるらしい。
だって、私目がけて言ってた。
「蘭王って……関東1の?」
千年くんは知ってるらしい。
関東1って、スゴッ!
「…まーな」
照れくさそうに言うが、そこは空気よんで照れないでほしい。まぁ、照れたい気持ちもわからなくもないが。
「…です、よね」
引き気味になる千年くん。
「といっても、正統派だぞ?んな悪いことはしてねぇよ」
あ、そうなんだ。安心。
倉橋くんの口から聞くと、そう見えないけど、さっきみたいに全速力で走ってきたのを思い出すと、納得してしまう。
「ちなみに俺、現8代目総長」
へぇー……ぇぇえ?!
倉橋くんがぁぁ?!
「空真さんは6代目」
あ、開いた口が塞がらないって……こういうことね。現にそういう人が4人いるし。