*恋の味[上]*【完】
「麻美が言いたいのは……蒼空との婚約だと思う」
…………。
雷斗を見ると、頭を抱えていた。
「……んで…」
「何?」
「なんで?!倉橋くんはいいの?!」
狂う私。
わかってる。お父さんも倉橋くんも悪くないって。
「……空真さんと麻美さんは俺の恩人だ」
意味分かんない。
好きなのに…雷斗が好きなのに!
なんで他の人と結婚しなくちゃいけないの?!
「真麻…落ち着いて…」
「落ち着けって、由良は他人だもんね!落ち着けるわけないじゃん!好きじゃない人と結婚なんて幸せになれるわけないじゃん!幸せな由良には分かんないよ!なんも不自由のない由良には!」
「真麻!」
あ……言いすぎちゃった。
それは分かってるんだけど口が動かないの。
「謝れ」
ドスの効いた低い声でいうお父さん。
「……っ」
情けない。私は駆け出してた。
「おい、真麻っ!」
でも奥に座っていたから、端っこに座ってた雷斗に手を掴まれた。
「頼むから落ち着け」
あまりにも哀しそうな顔で言う雷斗に何も言い返せれなかった。
「……くっ…ふっ……」
自然と溢れる涙。
私って雷斗に弱いな……。