*恋の味[上]*【完】
「真麻、何で泣いてるの?」
翔が心配そうに聞いてきた。
泣い…てる?
手を頬にあてると、温い液体がついた。
泣いてる。
私は今日、何回泣いただろう。
「雷斗……別れ、よう」
震える声で、そう言った。
ごめんなさい。ごめんなさい。
自分勝手でごめんなさい。
あれほどお父さんたちに言ったのに。あれほど別れを拒否したのに。
雷斗の家系の所為じゃないの。雷斗が悪いんじゃないの。
私が弱いだけなの。
「お前……っ」
ごめんなさい。
謝りきれない。いくら謝っても、謝りきれない。
もう苦しめたくないの。
私と付き合ってても、幸せになんかなれない。
許さなくてもいいよ。
ずっと、恨んでてもいいよ。
仕方ないから。仕方ないでしょ?
分かってる。だから幸せになって?
誰かに幸せにさせてもらって?
「ふざけんなよ」
ふざけてる?そうね。
「俺は……っ」
ごめんなさい。
「お前以外無理なんだよ」
愛してくれて、ごめんなさい。