*恋の味[上]*【完】
「真麻…っ…うちは嫌!」
「…ア……カリ?」
「せっかく友達になれたじゃん!このままあっさりお別れなんて……」
「アカリ…、ありがとう。……あり、がとう!」
「真麻ぁ…」
離れさせて……。
私を忘れて……。
「空真さん、そろそろ……」
倉橋くんがお父さんに言う。
お父さんは腕時計を見て、顔を顰めた。
「あぁ、そうだな。真麻、退院できたら準備をしよう。友達と少し話してな?」
そう言って私の頭を撫で、荷物を持ち立ち上がった。
「お父さん…、ありがとう。ごめんなさい」
「ふっ…、気にするな」
柔らかい笑顔に安心する。
「じゃあね」
「あぁ」
2人のやりとりを、みんなが少し顔を歪ませながら見ていたなんて、私たちは知るはずもなかった。