*恋の味[上]*【完】


「銀王の元総長、誰っスか?」

さ、殺気が……。

「…武田」

「「……っ?!」」

武田…、どっかで聞いたことあるような……。

「武田、龍輝……の父親、かもしれない」

「武田龍輝?」

「前に真麻をコンビニの前でナンパした奴」

……っ…!

世間は、狭い。

「銀王潰していいっスか?」

「現総長はお前だ。俺が決めることじゃない。だが、あの事件から時間(トキ)はたっている。今の銀王が手荒なマネしているかが問題だ。そんな私情でチームを動かすな」

「………」

流石元総長。

そうみんなが思ったことだろう。

迫力と威圧感が凄かった。

空気が張り詰めた。

「…はい」

倉橋くんも納得したようだ。

「真麻…、蹴人たちの墓参りいくか?」

私を守ってくれた所為で亡くなったといっても間違ってはないだろう。

「行く…」

挨拶くらいはしたい。

「じゃ、退院したときに行くか」

「うん」

お父さんの優しい微笑みに満面の笑みで返した。

みんなの顔が少し赤くなったらしいけど、私はあまり気にならなかった。

「みんな今日は帰ってもらえるかな?」

自分の心の整理をしたいの。

「わかった」

そう言って最初に立ったのは意外にも雷斗だった。

早く帰りたいのかなと思うと少し胸が痛かったけど、

「俺らのこと、ちゃんと考えてくれな」

そういって寂しそうな笑顔を浮かべるのをみると、また違う意味で胸が痛くなった。


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