*恋の味[上]*【完】
……――あれから1ヵ月後。
ただ何もなく、平凡な日だった。
見舞いに来てくれるのは、お父さん・由良・千年くん・アカリ・倉橋くん。
雷斗は一度も来てくれなかった。
学校に通っていない私には関係ないが、終業式の日だった。
怪我もすっかり完治した今日、退院する。
そして、この街を出る。
病室においていたものを鞄に入れ、ドアに向かった。
すると、
“ガラガラ”
………。
「あ、ごめん。ノック忘れてた」
「いや、いいけど…」
そこには……、
「雷斗……」
「久しぶり」
制服姿をした、最愛の彼がいた。
「これから冬休みかー」
「あぁ、寒ぃよ」
季節はすっかり冬。
まだ雪は降っていないが、そろそろ降る頃。