*恋の味[上]*【完】


……――あれから1ヵ月後。

ただ何もなく、平凡な日だった。

見舞いに来てくれるのは、お父さん・由良・千年くん・アカリ・倉橋くん。

雷斗は一度も来てくれなかった。

学校に通っていない私には関係ないが、終業式の日だった。

怪我もすっかり完治した今日、退院する。

そして、この街を出る。

病室においていたものを鞄に入れ、ドアに向かった。

すると、

“ガラガラ”

………。

「あ、ごめん。ノック忘れてた」

「いや、いいけど…」

そこには……、

「雷斗……」

「久しぶり」

制服姿をした、最愛の彼がいた。

「これから冬休みかー」

「あぁ、寒ぃよ」

季節はすっかり冬。

まだ雪は降っていないが、そろそろ降る頃。


< 241 / 260 >

この作品をシェア

pagetop