*恋の味[上]*【完】
ふと病院の外を見ると、寒そうな格好で歩いていく女の子たち。
私もあんな風に歩きたいなって、前までは普通にできていたことも、今では欲望となっている。
もう、ほぼ完治。
退院間近だった。
「本当に……、行くのか?」
雷斗の方に視線を戻す。
そんな切なげな目で見ないで……。
「行くなよ…」
行きたくなくなるでしょ…。
「俺の側にいろよ……」
行けなくなるでしょ……。
「何度も言うけど……」
お願い、言わないで……っ。
「お前しか愛せねぇんだ」
力強く私を抱き締めた。
やめてよ……。
離れられなくなる。
離れたくなくなる。
でも、なぜか体が拒否をしない。
雷斗から離れることを、体が許してくれない。
私を……、私の意志を……。
惑わさせないで……。
お願い…。
もう誰も傷つけたくないの……。
私の所為で……、人生をかえないでほしいの……。