*恋の味[上]*【完】
体が離れると同時に、凄い視線を感じる。
雷斗の方を向けない……。
「俺を見ろ」
無理だよ……。
「顔、見せろよ」
嫌だっ……。
だって……、
「泣くなよ」
涙が頬を伝っているの、自分でも分かるから……。
ツラそうな表情を向けるけど…、これは雷斗の所為じゃない。
優柔不断で、周りの人を傷つけている自分に腹が立つ。
「真麻……」
名前、呼ばないで……。
「真麻っ…」
戻りたくなる……。
貴方の腕の温もりが、今もまだ体に熱をもっている。
ほら……、こんなにも忘れられなくなっている。
雷斗も私も……“過去の人”。
それで終わらせたいのに……、終わらせたくない……。
まだ、我が儘な“私”がいる……。