*恋の味[上]*【完】
「なんで…「待って!」
私はお父さんの言葉を遮った。
「分かった……、分かったから……っ」
小さい声を、出ない声を精一杯発した。
お父さんは更に顔を歪め、雷斗は悔しそうな表情を浮かべる。
ねぇ、傷ついた?
私、また傷つけちゃった?
「真麻……っ」
もう、呼ばないでよ。
雷斗のその小さい声、お父さんに届いてる。
そしてまた、お父さんが傷つく。
ね?全部私……。
お母さん……、お母さんが残してくれた命、私には勿体なかったでしょ?
だって、弱いんだもん。
人間って不平等だよね。
殺された人は、もうこんな風に存在しないのに……、殺した人は生きてるんだよ?
殺した人は…、例え刑務所に入っていても……生きてるんだよ?
“体”があるんだよ?
おかしいよね……。
私はどうすればいい?
誰か決めてよ……。
考えたくもない……。
私の案は、人を傷つけるから。