*恋の味[上]*【完】


少し沈黙が続いた。

それを破ったのは…、

「……っ、お義父さん。真麻さんを俺に任せてもらえませんか?」

雷斗の少し震えた…でも、力強い声。

「……雷斗…」

雷斗も雷斗で考えてくれている。私が思っているよりも……。

ごめんね、と心の中で呟く。

「…お前は真麻を支えていけるのか?どんなときでも1番に考えてやれるのか?」

………っ…。

真剣な眼差しで初めてまともな返事をくれた。

私も雷斗も、突然の質問に戸惑う。

「っ、できます!」

その凄い力強い声に、私は心が打たれた。

また頬に涙が伝う。

私ってこんなに泣き虫だったっけ。

それでも嬉しすぎて、緊張の線が緩んだおかげで、頬まで緩んだ。

「それじゃあ……!」

明るい声で問う。

「……あー、もう!俺って甘ぇ!」

笑いながら自分にキレるお父さん。

その姿を雷斗と2人で笑う。

さっきまでの雰囲気が嘘だったみたいに……。

「真麻のこと、ちゃんと愛してやらねぇと、今度こそ遠く行くからな?」

「もちろんです!」

もう、誰にも邪魔されることはない……。

私たちは今度こそ、叶えられるんだ。

“ずっと一緒”という誓いを…。


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