*恋の味[上]*【完】


「ここだよーん」

ついた場所は605号室。

「ありがと」

「いえいえ!じゃ!」

「ばいば―……」

早っ!


う゛ー……なんか緊張する。

怒られるか?喜んでくれるか?

私、手ぶらできちゃったし。


――…………!

ていや!

“ガラッ”

あ、ノック忘れた。

「はぁい……って真麻じゃない!あんた遅い!心配したじゃないの!もう!……でも、いらっしゃい」

怒ってんの?嬉しがってんの?分かんない人。

けど、安心した。元気そうで。

「まっ!あんた、ちゃんと食べてんの?!はい、ここにケーキあるから食べなさい」

「食べてるって!てか、今、友達のとこで食べてきたから。お腹いっぱいだし、いらない」

これ以上食べたら死ぬっての。

「あら、友達?誰よ!今度、連れてきなさい。なんで今連れてこなかったのよ?」

命令かよ。

「用事があるんだって。なくても連れてこなかったけど」

「用事って男とっぽいわね」

「男だよ……」

めんどくさいなぁ。
これだから、会いたくないの。

「んもーっ!あんたも早く男捕まえなさいよ」

「私もいるっての!」

あ゛……言っちゃった。

「えぇぇ?!いるの?え?連れてきなさい!今すぐ呼びなさい!」

なに言ってんの?このオバサン。

「無理。絶対いやっ!」

今すぐなんて、絶対ありえない。

なんて、自己中なの。

「またね!また連れてくるから!」

とか言わないと、永久に言ってくるからね。


< 83 / 260 >

この作品をシェア

pagetop