*恋の味[上]*【完】
「ここだよーん」
ついた場所は605号室。
「ありがと」
「いえいえ!じゃ!」
「ばいば―……」
早っ!
う゛ー……なんか緊張する。
怒られるか?喜んでくれるか?
私、手ぶらできちゃったし。
――…………!
ていや!
“ガラッ”
あ、ノック忘れた。
「はぁい……って真麻じゃない!あんた遅い!心配したじゃないの!もう!……でも、いらっしゃい」
怒ってんの?嬉しがってんの?分かんない人。
けど、安心した。元気そうで。
「まっ!あんた、ちゃんと食べてんの?!はい、ここにケーキあるから食べなさい」
「食べてるって!てか、今、友達のとこで食べてきたから。お腹いっぱいだし、いらない」
これ以上食べたら死ぬっての。
「あら、友達?誰よ!今度、連れてきなさい。なんで今連れてこなかったのよ?」
命令かよ。
「用事があるんだって。なくても連れてこなかったけど」
「用事って男とっぽいわね」
「男だよ……」
めんどくさいなぁ。
これだから、会いたくないの。
「んもーっ!あんたも早く男捕まえなさいよ」
「私もいるっての!」
あ゛……言っちゃった。
「えぇぇ?!いるの?え?連れてきなさい!今すぐ呼びなさい!」
なに言ってんの?このオバサン。
「無理。絶対いやっ!」
今すぐなんて、絶対ありえない。
なんて、自己中なの。
「またね!また連れてくるから!」
とか言わないと、永久に言ってくるからね。