4月の雪は溶けなかった




そんなある休みの日、あたしは友達とカラオケで騒いで遊んで、夜8時ぐらいに駅前通りを歩いて帰っていた。



最近はとても物騒なので、いつもの倍ぐらいのスピードで歩いた。




「あれ?井上?」



「ぎゃあああ!!!!?」



スタスタと警戒しながら歩いていると、いきなり男の人に話しかけられてかなりびっくりした。


「わわっ!!お、俺だよ!!大きい声出すなって!!!」



「なっ、中野先生!!!?」



本当にびっくりした。

でも、せんせーの顔を見たら、恐怖なんかはぶっ飛んでしまって、せんせーと学校以外で会えたことが嬉しかった。




「…せんせー、…私服もカッコいいですね…。」



思わず口に出してしまった。



「そうか〜?俺嬉しいなあ。」



そう言いながらせんせーはおどけてモデルみたいなポーズをしている。


こういう面白さが大好き。


「はははっ!!せんせー…もう良いですよー。」


「もう良いのか?サービスなのになあ。」



せんせーは笑いながらポーズをやめ、急にあたしの腕をつかんで一緒に道の端に移動した。





サーーーーー



その2秒後ぐらいに、自転車が通り過ぎていった。



こういう優しさが大好き。



「あの…ありがとございます…。」



「良いってことよ。それより、1人で帰っているのか?」



「はい。だから余計に話しかけられてびっくりしたんですよ!!まあせんせーで良かったですけど…。」



「そうかそうか!!驚かせて悪かったなあ。1人で帰るのは、危ないから俺送って行くよ!!」



「そんな、悪いですよ!!それに、彼女さんがいるのにいくら教え子だからってあまり良くないです。」








< 10 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop