4月の雪は溶けなかった
そんなある休みの日、あたしは友達とカラオケで騒いで遊んで、夜8時ぐらいに駅前通りを歩いて帰っていた。
最近はとても物騒なので、いつもの倍ぐらいのスピードで歩いた。
「あれ?井上?」
「ぎゃあああ!!!!?」
スタスタと警戒しながら歩いていると、いきなり男の人に話しかけられてかなりびっくりした。
「わわっ!!お、俺だよ!!大きい声出すなって!!!」
「なっ、中野先生!!!?」
本当にびっくりした。
でも、せんせーの顔を見たら、恐怖なんかはぶっ飛んでしまって、せんせーと学校以外で会えたことが嬉しかった。
「…せんせー、…私服もカッコいいですね…。」
思わず口に出してしまった。
「そうか〜?俺嬉しいなあ。」
そう言いながらせんせーはおどけてモデルみたいなポーズをしている。
こういう面白さが大好き。
「はははっ!!せんせー…もう良いですよー。」
「もう良いのか?サービスなのになあ。」
せんせーは笑いながらポーズをやめ、急にあたしの腕をつかんで一緒に道の端に移動した。
サーーーーー
その2秒後ぐらいに、自転車が通り過ぎていった。
こういう優しさが大好き。
「あの…ありがとございます…。」
「良いってことよ。それより、1人で帰っているのか?」
「はい。だから余計に話しかけられてびっくりしたんですよ!!まあせんせーで良かったですけど…。」
「そうかそうか!!驚かせて悪かったなあ。1人で帰るのは、危ないから俺送って行くよ!!」
「そんな、悪いですよ!!それに、彼女さんがいるのにいくら教え子だからってあまり良くないです。」