4月の雪は溶けなかった
ガシッ
「へっ!?」
せんせーを2・3歩追い抜いたところで腕を掴まれた。
「……井上…」
せんせーは何かを言おうとしているけれど、なかなか次の言葉が出ない。
あたしは何か喋りたいんだけど、何も思い浮かばずただせんせーの言葉を待つようにせんせーを見つめた。
「………本気か?」
「はい。本気です。」
あたしは真っ直ぐせんせーの目を見た。
「…そうか。…………正直、いきなりのことで動揺してる。」
せんせーは少し下唇を噛んであたしを見つめている。
「……はい…ほんと急にごめんなさい。」
「いやぁ、謝らなくても良いって。ほんとにただ単にびっくりしたっていうのが率直な感想なんだ。」
あたしは黙ってせんせーが放つ一言一言を聞いた。
「でも、嫌じゃないって思ったのも確か。」
まだ掴まれている右手首がだんだんと熱を持ち始めた。