4月の雪は溶けなかった
―――この仕草は今までに何度も見たことがある。
特に唇を噛むのは頻度が高い。
学年主任の先生に注意された時とか、ある放課後、26歳数学の女教師と30歳英語の男教師が非常階段でイチャイチャしているところに遭遇した時(あたしもせんせーと一緒にいたので相当気まずい)とか。
そして、あたしの告白に答えてくれた時も下唇を噛んでいた。
―――だから、この仕草がわからない、気づいてもいない女に少しの、本当に少しだけの優越感を覚えた。