4月の雪は溶けなかった
ある日の放課後、あたしは質問をしにせんせーのところへ行った。
質問は自然に生まれたのではなく、せんせーに会いたいというだけで無理矢理に作った。
「失礼します。中野先生いらっしゃいますか?」
「お、井上質問か?」
せんせーは給湯室にいたらしく、湯気の立つマグカップを持ってあたしのところに来た。
「はい!!この和歌の訳がよくわからなくて…」
あたしはノートを見せた。
「…なるほど、単語とか助動詞とかは調べたんだな。」
「はい、でも繋げ方がよくわからないんです。」
「なんとなくこの和歌のニュアンスはわかった?」
「うーん、恋を詠んだ歌だろうな〜っていうのはわかるんですが…」
「そうそう、確かに恋を詠んだ歌だよ。」