キミを求めて

Grave

電車を乗り継いで三時間。

辿り着いたのは、パパの故郷。

去年まではなかった自動改札を抜け、昔から何も変わっていないように見えて、この場所もゆっくりと変化していることが分かる。

駅前に寂しそうに一台だけ止まったタクシーを見つけ、乗り込む。

行き先を告げ、硬いシートに全身を預ける。

ふぅ。

自然と吐息が漏れ、全身に重だるさを感じる。

少し長かった移動時間のせいだろうか。

そんなことを考えていると、運転手が話しかけてきた。

「疲れたかい?」

「はい。少し」

後部座席から見える白髪交じりの頭に、少ししゃがれた優しい声。

何故か会ったこともないお祖父さんの面影を感じる。

「いつもなら隣町の駅前ロータリーでお客さんを待ってるんだけどさ。今日は何となくこっちに来てみようと思ってさ。お嬢さんを乗せるためだったのかな」

そんな事を言いながら、バックミラー越しに私を見ながら笑う。

何と言えばいいか分からず、笑顔で返事し、窓に目を向ける。

車がようやく二台通れるかというぐらいの道。

道路の左右は緑に囲まれ、たまにある畑に人がいるのを見て、この街にも人がいるのだと分かる。

「一人でこんなところまで来るなんて珍しいね」

普段なら面倒に感じる他人との関わりも、このおじいさんだと答えようと思えるから、やっぱり不思議だ。

「ええ。お墓参りなんです」

「お祖父ちゃんかい?それともお祖母ちゃん?」

「いえ。母なんです」

「そうかい。余計な事を聞いてしまったなぁ」

運転手のおじいさんは、申し訳なさそうに答える。

「気にしないでください。昔のことですから…」

生まれた時にはもうそこにいなかった母。

私には、幼いころからあまり母を求めた記憶がない。

恐らく、パパがいてくれたから。

パパさえいれば、寂しいなんて思わなかった。

母のお墓参りに行っている今だって、パパがこの場にいないことの方が私には…辛い。
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