キミを求めて
…なんで泣いてるんだろう。

溢れ出る感情が緩やかになった頃、ふと思う。

随分前から分かっていたことだった。

自分の存在意義。

どうしてここに居るのか。

どうしてパパが私を可愛がってくれているのか。

ただの身代り。

そう。ママの身代り。

分かっていたことだった。

『篠宮ゆき乃』は、私じゃない。

『篠宮雪乃』なんだと。

ママの娘だからこそ、ここに居られるのだと。分かっていた。

でも、それでも。

頭で理解はしていても、…辛い。

私の感情は置き去りに、ママへの欲情をそのままぶつけられるのは辛い。

『ゆきの』だからここに居られる私。

でも、『ゆき乃』で居たいと願う私。

ずっと抱えてきた葛藤が、心を強固に締め付け、箍(たが)が外れたその刹那、爆発した感情に呑み込まれた。

どの位経ったのかは分からないけれど、現状を把握できるようになった時には頬の涙は流れを止め、漏れる声は少し掠(かす)れていた

じっとりと嫌な汗をかき、背中に水滴が伝うのが分かる。

どうしようもないほど喉は渇き、全身が水分を欲していた。

水。飲んでこよ。

目を手の甲で拭いながら、私はゆっくりと立ち上がった。
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