キミを求めて
資産家だった父が死に、早くに母を亡くしていた私は、親戚に引き取られた。

大学にも行きたかったが、早く家を出る為にも仕事に就いた。

父が作った研究所。

小規模な物ではあったが、持て余す金を注ぎ込んで作られた施設内には様々な実験機具が備わっていた。

特に何がしたいわけでは無かった。

自分の興味の対象を好きなだけ観察、研究していられる。

当時は、ただそれだけで就いた仕事だったが、今考えてみると、あの場所に入っていったのも運命だったのかもしれないと思う。


自室で着替えていると、リビングからゆき乃の声がする。

「もう出来ましたよぉ」

彼女の面影を追い掛けるように、日に日に似てくるゆき乃を見ていると、自分の罪深さがよく分かる。

あの時、あの場所で、自分のしたこと。

人として越えてはならない一線を越えてしまったこと。

神から授かりし、『人間(ヒト)』という生命を、同じ人間である私が創り上げたという罪。

しかし、後悔をしていないのも事実。

ゆき乃が居てくれたからこそ、私は生きてこられたのだから。

彼女の存在が、今の私の生きる糧であり、意味でもある。

「ご・は・ん!で・き・ま・し・た・よ-!」

振り返ると、そこには、仁王立ちして眉を吊り上げたゆき乃がいた。

「あっ…ゴメン。ゴメン」

苦笑いを浮かべつつ、脱いだYシャツを片付け、リビングに足を向けた。
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