あんな。めっちゃ、だいすきです。

短い足をできるだけ上げて、うしろの座席にまたがる。


バイクのうしろの席は、いっちゃんがちょっといじくって背もたれつけてくれたから、座るんめっちゃラクちんやねん。


いっちゃんの肩をギュって握ったら、それを合図にいっちゃんがエンジンをかけた。



ぶるん、ぶるん。



太ももに伝わる振動。

いっちゃんの手首がクイって動いた瞬間。



…まるで息がうばわれるみたいに。



世界が、うしろに動いた。



「〜いっちゃん!!」

「ん?」

「いっちゃんのバイク乗るん、久しぶり!」



風に負けんように、おっきい声で呼びかける。

いっちゃんが笑っとるのが、空気が揺れるのでわかる。


首筋に鼻近づけたら、ちょっとスパイスっぽい匂いがした。


いっちゃんのバイト先は、カレー屋さんや。


1回だけ行ったことあるねんけど、揚げナスと鶏肉のやつがなかなかおいしい。



いっちゃんとウチのヘルメットがぶつかって、かつんとたてる軽い音。


昼間の暑さがウソみたいに、ほっぺたの熱をさらっていく風は心地よくて。




「「めっちゃ気持ちええなぁ!!」」



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