あんな。めっちゃ、だいすきです。
声も、涙も、鼻水も。
ぜんぶいっしょくたになって、めちゃくちゃな顔。
蔵本さんとふたりして、一緒に泣いた。
泣いて泣いて泣いて、頭がぼうっとするくらい、涙が出た。
アホみたいに泣いたから…心配して主任さんとかリハビリの先生が何人か病室に見に来たくらいや。
涙をぬぐって、ぬぐいつづけて、びちょびちょになった手のひら。
まだツルッとして、シワもきざまれてへん、苦労を知らん手のひら。
蔵本さんの手のひらは、めっちゃごつごつして、かたくて、厚くて、ぬくくて、シワがいっぱいあって。
これから、このウチのちっこい手ぇができること。
きっとそれは、ごく当たり前のことくらいで、
握れるもんなんてたかがしれてて、
だれかに伸ばせても、その人をまるごと引っ張り上げられる力なんかなくて、
もちろん…奇跡なんかをおこせるわけもない。
できることはきっと、めっちゃ少ないけど。
蔵本さんの手を、ぎゅーっと握って、かたく握手して、思った。
それでも、この手のひらが患者さんの。
…その人の心の、あったかい一部分になれたら。