あんな。めっちゃ、だいすきです。



…うん。


うん、そうやねいっちゃん。



ヘルメットをしっかりかぶり直して、いっちゃんの後ろ。

革のシートに、おしりをのっける。



エンジンがかかって、出発して。



流れる速い空気が、涙でバリバリになったほっぺたをくすぐった。



実習中ずっとひとつに束ねてた髪が、一本一本ばらけて風に舞う。



…めっちゃ、気持ちええなぁ。



「きもち……」

「ははっ、やろ〜?」



思わず心ん中が、声になって飛び出てた。


ゆれる、いっちゃんの肩。

気持ちええ。ほんま、安心する。



「……で?」

「え?」

「その顔は、よかった方?悪かった方?」



ふたりとも、前を向いたまま。


流れてきたいっちゃんの声に答えるように、ぎゅっとまきつく力を強める。



「…よかった、ほう。」


「…そか。ほな、よかった」



嬉し泣きと、安心したんと、切なかったんと。


もっかい決意を改められた、涙のあとやから。



どんどん、景色が流れてく。


心地よくて、ほんまこのまま、空気に混じってもうてもええかもなぁって、思う。



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