あんな。めっちゃ、だいすきです。


思わぬ話題に、その場に固まってしもうた。


なにを聞いてんのおとうさん。


…どこが、好き?


そんなこと、聞いたことない。



ぽたり、髪の毛から1粒、しずくがおちる。


いっちゃんの声も、ぽたり。


ドアを隔てた部屋の中に落とされて。



「あの……なんていうか」


「どこが、とか。挙げ出したら多分いっぱいあるんです。でも、」


「どこ、とか、そういう部分的なんやなくって。」




───みともは気付いてないと思うけど。




「俺、みともが俺のこと好きでおってくれるんよりずっと、みとものこと、めっちゃ好きなんです。」





耳から入って来たそれが、脳に届くまでちょっと時間がかかった。


多分、ゆっくりゆっくり、ウチの中の細胞いっこいっこに、しみこんで伝わってきたから。



ぽた、ぽた、ぽた。



濡れたままの髪の毛から、しずくが落ちる。



…なんか、なんかなぁ。


まぶたにぎゅーって力入れとかな、うるっとしてまいそうやった。



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