あんな。めっちゃ、だいすきです。


今まで育ててもらって、それはちゃんと知っとるもん。


やから…イライラと同時に、どうしても込み上げてくる不安があった。



…もし。



もしおかあさんが、ほんまにおとうさんと別れる気やったら……?



「みとも。」



肩をたたかれて振り返ると、思ったよりもずっと沈んだ表情のおとうさんがいた。


…そりゃそうやんな。


やっと仲直りできるんちゃうかって、迎えに来てくれるって思ってたおかあさんが音信不通やねんもん。


なんて声をかけたらええもんかな…と言葉を探してたら、おとうさんは静かな声で、はっきりと言った。



「…おとうさんいっぺん、おかあさんの実家に行ってみるわ」

「え……?」

「いつまでもこうしとるわけにはいかんやろし。…わからん、けど、話せるように頼んでみる…」



自信なさげに、言葉が尻すぼみになる。


…でも。


おとうさんがおかあさんにリストラのこと話して、それで出て行ってもたわけやろ?


おとうさん一人で大丈夫なんやろか。

また同じことなるんちゃうかな。


…間に誰か入った方が、お互い冷静になれるんちゃうかな。



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