あんな。めっちゃ、だいすきです。
それよりなにより、心配でこっちに残ってのんびり待っとるとか…できへんやんか。
「…あの、お父さん」
さっきまでずっと黙ってたいっちゃん。
ウチの思いを汲み取ってくれたんか、わからんけど。
「僕、良かったら送っていきますよ。みともも心配やろし、一緒に行ったらどうですか。僕の実家の車あるし、新幹線代とか結構かかるやろし」
「……いっちゃん、でも」
「僕も心配なんで。良かったら送るだけ送らせてください」
いっちゃんはそれからすぐに、実家に車を取りに行ってくれた。
バイクに乗るのもしばらくぶりやけど、いっちゃん家の車に乗るのはもっと久しぶり。
助手席に乗り込むと、淡い柑橘系のような香りがした。
「ごめんないっちゃん…」
「ええって。ちょうど久しぶりに車でドライブしたかってん!」
いっちゃんがそう言って笑ってくれるから、ちょっとだけ心が和んだ。
ウチの家の問題にいっちゃんまでずっぽりまきこんで、申し訳ないって思ってたけど。
おとうさんも後部座席に乗り込んで、車はゆっくり出発した。