あんな。めっちゃ、だいすきです。


いっちゃんとウチの部屋が、どんどん遠ざかって行く。


黙ったまま、Tシャツの中に首をすくめた。



ちょっと前に地元に帰った時は、まさか次にこんな形で帰ることになるとは思わんかった。


だっておとうさんもおかあさんも、全然変わらんくて。

いつも通りで。



リストラって、そりゃおっきいけど。


大問題やし、しかもおとうさんはそれを隠してたわけやけど。


こういう時こそ、お互いに助け合うべきなんやないんかな。


悪いことは叱って、でも、見放したりせぇへん。



…ウチの好きなおかあさんは、そういう人やろ?



疑問とか、やるせなさとか、いきどおりとか。


それよりも何よりも、




…こわい。




だって当たり前で、当たり前すぎて、ずっと帰るのとかもおざなりにして。


もしかしたら家族、壊れてまうかもしれん。


ウチが帰るとこ、なくなってまうかもしれんのや。



沈黙が重たい空気の中で、いっちゃんは努めて明るくふるまってた。


かけてくれたのは、ジャカジャカうるさいロックのCD。


いっつもはなにかしらしょーもないこと言うて、構ってくるはずやのに。



…おとうさんは後部座席で、ほとんどしゃべらへんかった。







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