あんな。めっちゃ、だいすきです。
「……中、もどる。」
「………」
「…戻ってもっかい、ちゃんと話、聞く。」
おとうさん助けたらなって思ってついてきたのに、ウチがしっかりしてなくてどうすんの。
そう思ったけど、やっぱりまだ足に力入らんくて。
指先も、ちょっと震えてて。
…いっちゃんの手を、ぎゅうっと握る。
「…いっちゃんもついてきて」
「………………」
「……おねがい。」
いっちゃんはそのままウチの手を包み込んで、握り返してくれた。
「うん、行こう。みとも」
さっきの和室の中では、まだおとうさんとおかあさんは真っすぐ向き合ったままやった。
…まだ、話してるみたい。
入りづらくて、引き戸のすきまから中の様子をのぞき見る。
いっちゃんと手を握ったまま、廊下にしゃがみこんだ。
ぽつり、ぽつり。
さっきよりいくらか落ち着いたおかあさんの声が聞こえる。
それから、おとうさんの声も。
「おとうさんが、リストラされたことバラした日な。…あの日、病院の検査結果で、ガンっわかった日やってん。」