あんな。めっちゃ、だいすきです。
「……………そうか」
「ほんま…余裕ない時でなぁ。呆然としとったし。…そんな時におとうさんがリストラされてたとかいうから…もう頭ん中ごっちゃになって」
「………………」
「人生真っ暗って、こういうことなんやなって。…思った」
…そうやったんや。
おとうさんの娘宅放浪記は、そういういきさつやったんや。
おかあさんはうつむいたまま、畳に視線を置いたまま、笑う。
「やからブチ切れて、もう出ていく!!ってなってもてなぁ」
「…………すまんかった」
「おとうさんは見当違いでみともんとこに乗り込むしな。電話かかってった時はびっくりしたわ」
「………すまん」
「……謝ってばっかりやね」
「…………………」
「でも電話…なぁ。みともの声聞いたら、あーなんか、心配かけたくないなぁって思ってな…」
おとうさんがいきなり来て、電話かけた時のことを思い出す。
おかあさん、いつも通りやった。
元気で、マイペースで、自分勝手で、でも憎めへん。
…ウチの中のおかあさん、そのままやった。