あんな。めっちゃ、だいすきです。
「たしかに頼りないし、仕事までなくなったし、お前のこと気付いてやれへんかったし…けどどんなにきつい仕事でもするから!!見つけるから!!どんなきつーても……っ、」
おとうさんのおっきい声が、廊下にまで響く。
ウチの耳ん中にも、こだまして。
おとうさんの顔は、しわくちゃやった。
おとうさんは泣いてて、ぐちゃぐちゃで、かっこわるくて。
「〜お前のためやったら、やれるんやんか……っ!!」
…やのにめちゃめちゃ、かっこよくって。
おかあさんの瞳が揺れてる。
その瞳がこぼれおちる前に、おかあさんは目を伏せて。
「…一目惚れやったくせに」
「……うん」
「あたしの写真見て、惚れたくせに」
「うん、そうや」
─おとうさんから聞いた話。
おとうさんとおかあさんの、出会い。
「……不細工んなるで?」
おかあさんの声が、どんどんにじんでく。
「ガンの治療って大変やもん。…どんどん痩せて、皮がたるんで…、」
…それで。
「きっと薬で、髪の毛も眉毛もなくなるし…」
「……………」
「…全部、ぜん、ぶ…なくなる…し……っ!!」
「ええよ」
おかあさんの目から涙がぼろん、て落ちるんと、
おとうさんがおかあさんの手を取ったのは、同時やった。
「〜そんなん、ええねん……っ、」